梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

親方・貴乃花の「沈黙は金」

 元横綱・日馬富士の暴行問題が明るみに出てから一ヶ月余り、ようやくマスコミのメディアスクラムは鎮まったようである。それにしても、連日、貴乃花部屋の周辺にたむろして「親方!一言!」などと叫声をを上げる姿は見苦しい。その情景を見ながら、スタジオに集まった面々が「ああでもない、こうでもない」と井戸端談義をする様もまた、喜劇的であった。その間、終始「沈黙を貫いた」親方・貴乃花の姿勢は立派である。
 そもそも、この問題の本質は、国技を司る公益財団法人・日本相撲協会の《内紛》に過ぎない。「大相撲」の社会にはびこる「暴力」「八百長」等の陋習を打破しようと、かつてのガチンコ横綱・貴乃花が「孤軍奮闘」する様は、土俵の上よりも魅力的であった。
 弟子の貴ノ岩が日馬富士の暴行により負傷した。だから警察に被害届を提出、あとは司法の判断を仰ぐ、それが社会人の常識である。①巡業中の出来事なので巡業部長の貴乃花にも責任がある、②貴乃花は理事の一員だから理事会に事件の報告をする義務があった、③理事会もしくは危機管理委員会で「被害の状況」を説明する義務がある、④冬巡業に貴岩が休場しているのだから「診断書」を提出しなければならない、などという非難が浴びせられているにもかかわらず、貴乃花は一切応じない。当然のことだと私は思う。それが《内紛》の事態であり、解決を図るのは「日本相撲協会」という組織自体でなければならないからである。マスコミや第三者、要するに野次馬連中が取沙汰する問題ではないのである。しかし、協会の幹部はほとんどが「元力士」だという実態を見れば、解決への道は遠いだろう。親方・貴乃花の理事解任・降格、貴ノ岩の引退・廃業といった裁きで幕が下りるのではなかろうか。いうまでもなく、貴乃花が協会から離脱、あらためて「新日本相撲協会」を設立することを私は期待しているのだが・・・。(2017.12.16)