梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

徳育の「根幹」

  「徳育」(道徳教育)を教科に位置づけても、すべての子供たちに高い規範意識を身につけさせることはできない。なぜなら、そのためには、すべての大人たちが高い規範意識を身につけていることが前提であり、まず大人の社会が子供の「手本」にならなければならないからである。しかし、規範意識に欠ける大人の行動が社会の隅々にまで蔓延しているのが現状ではないか。学校という社会、教員という大人だけに、その高い規範意識を望むことには無理がある。まして「徳育」の根幹は「心を育てること」であり、「知識」を注入することではない。善悪の判断は、「知識」として教えることはできるだろうが、それを行動に移すかどうかは「心情」の問題である。だからこそ、現行の「学習指導要領」においては、「道徳」「特別活動」を「領域」として位置づけ、学校生活全体を通して指導することにしているのである。「真善美」という理念を「知識」として「頭」のなかに入れたところで、「社会規範」として「行動化」されなければ意味がない。大切なことは、「徳育」の格上げではなく、「集団の一員としての自覚を深め、協力してよりよい生活を築こうとする自主的、実践的な態度を育てる」(小学校学習指導要領)ことを目標にした「特別活動」の充実を図ることである。「教育再生会議 第2次報告」を読んでの感想を述べた。(2007.6.2)