梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

安倍首相の《詭弁》

 安倍首相は、国有地が「森友学園」に格安で払い下げられた問題で「私も妻も一切、払い下げに関係していない。もし関係していたら総理大臣も国会議員も辞める」と明言した。それは「大言壮語」に等しい物言いであり、とりわけ《一切》という文言を使ったことが命取りとなった。まさに「口は災いの元」、安倍首相はようやく「事の重大さ」に気づき始めたようだ。「夫人付き職員」(公務員)が、籠池氏の意向を受けて(拒否せずに)、財務省に問い合わせた(照会した)ことは事実である。その結果をファックスで籠池氏に連絡したことも事実である。もし、《一切》関係していないのなら、そのようなファックスが存在するはずがない。また、首相夫人と籠池夫人との間で「親密」なメールのやりとりが行われていたことも事実である。もし、《一切》関係していないのなら、そのようなメールが存在するはずがない。それらのファックスやメールが「偽物」であることが証明されない限り、安倍首相の「一切、関係していない」という物言いは「虚偽」ということになるのである。ちなみに《一切》とは「すべて」という意味であり、首相、首相夫人と、籠池氏、籠池氏夫人の間に、「すべての関係」が存在しないということである。
 安倍首相はファックスが「偽物」でないことを認めたが、「照会は職員個人が行ったもので、昭恵氏は関係していない」「照会は不当な圧力では全くない」「回答は一般的な内容にとどまり、ゼロ回答だった」などと、多くの詭弁を弄している。
 その極め付きは、籠池氏の証人喚問に関して(籠池氏が主張する昭恵首相夫人からの100万円の寄付について)「密室でのやり取りなど反証できない事柄を並べ立て、事実と反することが述べられたことは誠に遺憾だ」という指摘である。密室でのやりとりを安倍首相はその場で見ていたのだろうか。「事実と反する」と断定しているが、その根拠は何だろうか。安倍首相が、首相夫人や「お付き」職員の情報をもとに「事実と反する」と、《主観的》に判断したに過ぎない(ただ、そう思ったに過ぎない)。にもかかわらず、安倍首相は「事実と反する」と断定した。それを《詭弁》というのである。籠池氏は、宣誓して「100万円受け取った」と明言している。その「反証ができない」というのも《詭弁》である。当事者の昭恵夫人もまた、宣誓して「受け取っていない」と明言すれば、反証できるのである。昭恵夫人は籠池夫人に「講演の謝礼を頂いた記憶がなく・・・」「100万円の記憶がないのですが」などというメールを送っているが、「受け取っていない」と「記憶がない」では全く意味が異なる。これもまた《詭弁》である。
 「森友問題」の核心は、①国有地が格安で森友学園に払い下げられたこと、②そのことについて、安倍首相は「一切、関係していない」と明言したこと、の二点である。とりわけ、②の100万円の授受に関しては、籠池氏、昭恵夫人のどちらかが《嘘》をついているのだから、その真相を明らかにすることが先決である。
 そしてまた「森友問題」の構図は、所詮「保守」陣営の内輪もめ、利権を求める「憂国の士」の対立に過ぎない。「保守」を自認する籠池氏が「日本会議」から離縁され、共産党・社民党・民進党など「野党」にすり寄る有様は、哀れ・滑稽を通りこして、無惨という他はないのである。 
(2017.3.25)