梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

ユーチューバー「みずにゃん」の闘い

 ユーチューブを検索していたら「みずにゃんちゃんねる」というサイトを見つけた。これがたいそう面白い。「みずにゃん」と称する青年が、アダルト動画の架空請求業者らと電話で「やりとり」する場面を「自撮り」している映像である。
 要するに、青年は、①ショートメールで法外な金額の請求が届いたが、登録した覚えはない。どういうことか。②これからどうすればよいか。③金額の支払いはどうすればよいか。④金額が十万円を超えているので、直接、御社に届けたい。御社の所在地を教えてもらいたい。といった問いかけをする。電話の相手方は、当初(③までは)、いかにも親しみやすく、丁寧に応対していたが、④になると、態度が豹変する。「何で、こちらの住所まで教えなければならないのか」「お金を届けるためですよ」「コンビニに行って支払い手続きをすればよい」「払わなかったら、どうなるんですか」「法的手続きに入るまでだ」「どういう手続きですか」・・・、などという「やりとり」が続き、しまいには、相手方が一方的に電話を切る。青年は、執拗にリダイヤルする。相手方は「いったい、何なんですか。もう電話しないでください。オタク、何なの?」「ボクはユーチューバーです。御社のような架空請求業者をなくすために電話をしています。会社の責任者を出してください」「・・・・・」。代わった相手は一言「ウルセー!」。「え?ウルセーってどういうことですか。モシモシ、御社の住所を教えてください。」後は、ツー、ツー、ツーという機械音が鳴るだけ、青年が何度リダイアルしても、電話は不通となった。
 以上は、一例に過ぎない。(思い出すままに書いたので正確ではないかもしれないが、大意は合っていると思う。)青年は、悪徳詐欺師を餌食として、月60万~70万円の収入を得ているという。高齢者の私にとっては信じられないことだが、世の中変われば変わるものだ。一青年の闘いが、蔓延する悪徳を撲滅できれば、それにこしたことはない。
 老婆(老爺)心ながら、この青年と相手方(悪徳業者)との間に、露ほどの「密約」がないことを祈る。さらに言えば、青年はあくまで、一個人の被害者として、「自分を守る」ために闘うべきであり(そのような振りをして相手を騙すべきであり)、他の被害者のために助力をする必要はない(という振りをした方がよい)。その闘いが広がれば広がるほど、費やすエネルギーも拡大し、矛先が鈍るからである。くれぐれも身辺警護を怠らず、油断のないように。古い話だが、作詞家・水木かおるも以下のように警告している。「泣いた女がバカなのか だました男が悪いのか」「どうせ私をだますなら死ぬまでだまして欲しかった」(「東京ブルース」曲・藤原秀行、唄・西田佐知子)
(2017.3.14)