梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

安倍内閣の《末期症状》

2017年2月25日(土) 晴
 東京新聞2月24日付け夕刊(1面)トップには「首相『妻は名誉校長辞任』『児童らに迷惑かける』 『森友学園』予算委で応酬」という見出しの記事が載っている。また、翌日25日付け朝刊(1面)トップ記事は「森友学園への国有地売却『交渉記録既に破棄』財務省 保存1年未満と規定」という見出しであった。   
 この問題の核心はただ一点、評価額9億5600万円の国有地が、8億円余りも値引いた1億3400万円で売却されたことである。国有地は言うまでもなく国民の財産である。安倍首相は日頃「国民の生命、財産、幸福追求権を守るのが政府の責務だ」などと言いながら、8億円という大金を無に帰した(溝に捨てた)のである。首相は「私と家内、事務所も一切関わっていない」と述べたが、要は「取引のあり方」ではなく、国民の財産が不当に失われたという「事実」の方である。妻が名誉校長を辞めても、その「事実」は変わらない。学園が寄付を募るのに首相の名前を利用した件についても「断っているにもかかわらず寄付金集めに名前を使われたことは、大変遺憾であり残念だと強い抗議をし、先方からは謝罪があった」などと「しどろもどろの」弁解をしているが、一国のリーダーの言辞としてはあるまじき言動である。また、妻が名誉校長を辞める理由として「引き受けていることで小学校に通う子どもや両親に、かえって迷惑をかけ続ける」と述べたそうだが、それは、社会の批判をかわすための、稚拙な「詭弁」である。迷惑をかけられたくないのは首相自身の側であることは、名前の利用に強く抗議していることからも明々白々だからである。もし、この取引に「不正」が毫もないのなら、妻に堂々と名誉校長を続けさせるのが筋であろう。
 さらに言えば、取引に直接関与した財務省、財務相も「あたふた」として見苦しい。「取引が適正に行われた」のなら、交渉記録を廃棄する必要はない。なぜ、「国有地の売却額を非公表にしたのは(2014~16年度の693件のうち)森友学園の事例1件だけだった」のか。誰が考えても、9億円台の物件が1億円台で売却されることは、尋常ではない。(ましてこの取引には「国民の財産」が関わっているのだ。)
 第二次安倍内閣がアベノミクスを標榜して4年余り、国民の生活に大きな変化は見られない。野村総合研究所の調査(2015年)によれば、(金融資産1億円以上の)富裕層の世帯数は、アベノミクス以前(2010年)に比べ40万世帯増えた(国民の2.3%)が、国民の78.9%は3000万円未満である。また、年収100万円以下の貧困層は412万人で14%増えている。一方、年収800万円を超える富裕層も426万でほぼ14%増えている。とりわけ2000万円を超える人が5年前に比べ18万人から22万人(+21%)に増えた。
 つまり、安倍内閣の政策は、富裕層をいっそう富裕に、貧困層をさらに貧困にしたという「事実」が示されたのである。はたして「森友学園」(及びそこに通う子どもや両親)とやらが、富裕層に属するか、貧困層に属するか、8億円の値引きは、どちらのために行われたか。・・・それが問題である。
 いずれにせよ、安倍内閣の面々は、首相を筆頭に多弁・雄弁者が多い。その内容は空虚であり、中には詭弁、虚言、妄言も多々含まれている。(国民は彼らの「言葉」にダマされてはいけない。)今回の安倍首相の「しどろもどろ」な弁解、財務省の「隠蔽工作」は、すでに内閣の末期症状を呈しているのだ。終焉を迎える日も遠くはないだろう。
(2017.2.25)