梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

自転車は「車道」を走れ・《日本社会に露呈する「いじめの構造」》

 自転車は「車道」を走れ、などということは「言わずもがな」の話だが、現実は「さにあらず」、堂々と「歩道」を走っているのが現実である。嘆かわしい限りである。いうまでもなく、歩道は「歩くための道」、車道は「走るための道」である。そのような区別は4~5歳の幼児にだって分かる。人間だって走る場合には、車道(走るための道)に出なければならない。マラソン、駅伝などのロードレースは、どこを走るか・・・、「言わずもがな」の話ではないか。にもかかわらず、自転車は「歩道」を走っている。なぜだろうか。「道路交通法」で以下のように、規定されているからであろう。
《第六十三条の四  普通自転車は、次に掲げるときは、第十七条第一項の規定にかかわらず、歩道を通行することができる。ただし、警察官等が歩行者の安全を確保するため必要があると認めて当該歩道を通行してはならない旨を指示したときは、この限りでない。
一  道路標識等により普通自転車が当該歩道を通行することができることとされているとき。
二  当該普通自転車の運転者が、児童、幼児その他の普通自転車により車道を通行することが危険であると認められるものとして政令で定める者であるとき。
三  前二号に掲げるもののほか、車道又は交通の状況に照らして当該普通自転車の通行の安全を確保するため当該普通自転車が歩道を通行することがやむを得ないと認められるとき。
2  前項の場合において、普通自転車は、当該歩道の中央から車道寄りの部分(道路標識等により普通自転車が通行すべき部分として指定された部分(以下この項において「普通自転車通行指定部分」という。)があるときは、当該普通自転車通行指定部分)を徐行しなければならず、また、普通自転車の進行が歩行者の通行を妨げることとなるときは、一時停止しなければならない。ただし、普通自転車通行指定部分については、当該普通自転車通行指定部分を通行し、又は通行しようとする歩行者がないときは、歩道の状況に応じた安全な速度と方法で進行することができる。(罰則 第二項については第百二十一条第一 項第五号)》
 要するに、自転車は第17条第1項の規定により「車道の左側」を通行しなければならないが、例外的に、「歩道」を通行することができる。その例外とは、①「車道を通行することが危険」であり、かつ②歩道を通行しても「歩行者に危険が及ばない」時、もしくは「歩道に歩行者がいない」時に限られているのである。しかるに、「現実」はどうか。たとえば、京都・大阪の街中を照覧あれ。老若男女の運転者が、これまた老若男女の歩行者を「邪魔だ!邪魔だ!」と、け散らかして走り回っているではないか。私は、そこに日本社会の病巣を見る。車道において、自転車は「弱者」である。自動車から「邪魔だ!邪魔だ!」と追い払われ、「やむを得ず」歩道へ移ったとたん、今度は「強者」に豹変する。弱者(歩行者)を「邪魔だ!邪魔だ!」と、追い払うのだ。まさに、弱肉強食、加えて「やられたらやり返せ」という「いじめの構造」が、あざやかに露呈されている。そうした社会全体の病巣が、小・中学生に直截、反映されたのが、いわゆる「いじめ自殺事件」に他ならない。大阪市長・H某は、市職員の「刺青」を問題視しているようだが、その前に「やるべきこと」がある。「刺青」以上に市民を脅かす「暴走自転車」を取り締まれ、と言っても、歩道を「独りで」歩いたことのない御仁には通じるはずがないか・・・、これもまた「言わずもがな」の話である。
(2012.8.15)