梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

米軍兵士「死の理由」


 まもなく、イラク戦争による米軍兵士の戦死者は三千人に達するだろう。彼らは何のために死んだのだろうか。イラクの大量破壊兵器を見つけ出し、テロリストからアメリカ国民を守るためか。フセインの圧政からイラク国民を解放し、民主的な国家建設を支援するためか。それとも、異教徒に対する、クリスチャンの「聖戦」のためか。いずれも、彼ら自身及び遺族を納得させる理由にはなるまい。戦争の「大義名分」は、開戦の動機づけとして濫用されるに過ぎず、決して戦死者への「鎮魂」とはなり得ないからである。
 イラク戦争におけるアメリカの「軍事的」勝利は、同時に、自国民の「普遍的(良心の)」敗北を意味している。その勝利は、イラク国民(推定)十五万人の犠牲(死)によってもたらされたことを忘れてはならない。いかなる戦争にも「良心」の勝利はないのである。
 戦後六十余年、「平和ぼけ」の中で「経済大国」への道をたどった、私たち日本国民は、少なくとも、新たな「戦死者」への鎮魂をする必要がなかったことを「是」とすべきであり、「不戦」の具現こそが「人類の平和」を可能にすることを、全世界に向けて主張し続けることが大切だと思う。
 (2006.12.25)