梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

「戦争」で国を守ることはできない

 アメリカ大統領選でドナルド・トランプ候補が勝利した。彼は、駐留にかかわる費用全額を日本が負担しない限り米軍を撤収する由、まことにけっこうな話である。日本全土から米軍がいなくなれば、日本は自力で国を守らなければならない。当然のことである。世界中のどの国も、自分のことは自分で始末するのが常識である。では、どうやって国を守るのか。これもまたあたりまえのことだが、「武力」で守るのは最も未熟で愚か、最悪の方法である。幸いなことに、日本は「憲法九条」で戦争を放棄している。世間(メディア)では、日本から米軍が撤退すれば、直ちに隣国(中国、北朝鮮、ロシア、場合によっては韓国までも)が攻め込んでくるような話が取り沙汰されているが、世界に向けて「戦争放棄」を宣言している日本を、あえて侵略する根拠は見当たらない。事実、戦後70余年に亘って、日本はアメリカを除いて、他国から侵略されることはなかった。私たちはこの「歴史的事実」から、国防のイロハを学んだのである。「戦争」で国を守ることはできない。
 私は10年前にも以下の駄文を綴ったが、その思いはなおいっそう強まるばかりである。


《戦後六十余年、日本が「戦争」という犯罪に(直接)かかわらずにすんだのは、何よりも戦争を経験した人たち自身が、自己の愚かさを悔い、懺悔の気持ちで平和の復興に取り組んだからに他ならない。「先の大戦」では、約千名の日本人が戦犯として刑死したが、彼らはどのような思いで、どのようなことを後輩に託したか。私たちは真摯に学ばなければならないと思う。<つまらぬ戦争は止めよ。曾ての日本の大東亜戦争のやり方は間違っていた。独りよがりで、自分だけが優秀民族だと思ったところに誤謬がある。日本人全部がそうだったとは言わぬが皆が思い上がっていたのは事実だ。そんな考えで日本の理想が実現する筈がない。愛と至誠のある処に人類の幸福がある。(抜粋)>(野田毅・元陸軍少佐。昭和23年1月28日、広東に於て銃殺刑。35歳・『世紀の遺書』・巣鴨遺書編纂会刊)(2007.5.2)》
(2016.11.11)