梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

相模原殺傷事件・容疑者の「目途」

 相模原殺傷事件に対する社会の反応をみると、いわゆる「優生思想」(障害者の存在理由を疑う考え)の是非という問題に囚われすぎているように感じる。しかし、そのことこそが容疑者(犯人)の目途であることを見落としてはならない。「優生思想」は想念の枠内であり、思想・信条の自由という理念で守られている限り、いくら論議したところで結論がでるものではない。大切なことは、容疑者の犯罪(殺人罪)に対してどのように向き合うかという一点である。そのためには、犯行の事前に衆議院議長宛に出した容疑者の手紙を検証することが肝要である。彼はその末尾で、要するに「逮捕の監禁は最長で2年まで、心神喪失による無罪とし、その後は自由な人生を送らせてほしい。新しい名前、本籍、運転免許証、美容整形など、金銭的支援5億円を確約してもらいたい。決断頂ければ、いつでも作戦を実行する。首相にも相談してもらいたい」と述べている。彼は、《心神喪失による無罪》となり2年後には《自由な人生》が送れると「確信」しているのである。それを実現するために、精神病患者を装うことは必定であろう。案の定、現在、司法関係者は「精神鑑定」と称する様々な面談、検査を実施している。それもまた、容疑者の「思う壺」なのである。
 池田小学校事件の犯人(死刑囚)は、自ら死刑執行を望み処刑されたが、この容疑者は無罪放免を望んでいる。さてどうするか。今、社会はそのことを問われているのである。
(2016.10.3)