梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

私の戦後70年・浪人生詩人

 高校の文芸部の中で、石賦助(ペンネーム)は見るからに温厚・柔和な風貌で、目立つ存在ではなかったが、彼の詩作は際立っていた。今、手元に残存する詩集の中に以下の作品がある。《真間川にて》たそがれの/真間川の/ふちの/野いちご//赤い/野いちごの/影はとかげ//とかげよ//真間川の/岸のコンクリートに/はしれ/
 卒業後、私の下宿に転がり込んで「受験勉強」をしていた浪人生詩人・石賦助、練炭火鉢をそのままに気休めのパチンコ三昧、「新生」30箱を手土産に帰ってみれば畳は丸焦げ状態だった。大家さんに見つかれば大目玉ではすまされまい。畳屋に秘密の談判、かろうじて事なきを得たことが昨日のことのように思い出される。あれから40余年、彼はまだ生きているだろうか。(2015.4.30))