梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

私の戦後70年・高校

 昭和35年4月、私は東京郊外の公立高校に進学した。広い敷地には、木造校舎、食堂、図書館、体育館、プール等が立ち並び、校門から校舎玄関までは銀杏並木が続いていた。校則は緩く、下駄(朴歯)履きが許されるなど「自由」な雰囲気であったが、授業の内容は大学受験「一辺倒」で、学期末には成績優秀者の氏名が掲示される。私の学習意欲は激減し、授業に対する関心は消失した。高校は大学の予備校ではない。また、勉学は競い合うものでもない。私は図書館に通い文学書を濫読した。文芸部に所属し、文集・詩集を編んだ。成績はつねに「最下位」を争っていたが、おかげで多彩な友人・先輩たちと交流を深めることができた。山岳部、ラグビー部、サッカー部・・・、面々の懐かしい顔が浮かんでくる。しかし今、彼らのほとんどは物故者となり、巡り合うことはできない。(2015.4.27)