梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

八月十五日

 夏休みなので、長野に住む小学4年生の孫がやってきた。彼は、保育園の時から空手を習い始め6年目になるが、これまで試合で勝ったことが一度もなかった。しかし、「継続は力なり」、最近の試合では3戦全勝で優勝したという。これまで負け続けていたのに「なぜ勝てたのか」、私は不思議でならなかった。そのことを孫に尋ねると「・・・ウーン、よくわからないけど、相手を憎らしいと思ったからかな」。なるほど、勝つためには憎まなければならない、か。「真理」かもしれない。しかし、それは「ノーサイド」というスポーツマンシップと表裏一体でなければならない。大人の世界では、憎しみが憎しみを呼び、勝つための紛争・戦争が繰り返されてきた。日本は負けたことによって、憎しみを克服し、平和の尊さを学んだのである。今、そのことを孫に伝えることが、私の使命であると思った。(2015.8.15)