梨野礫・著作集

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

私の戦後70年・中学校入学式

 昭和32年4月、私は「学区外」の中学校に入学した。入学式は校庭で行われ、担任が新入生を一人一人、呼名する、呼ばれた生徒は「ハイ」と叫んで起立する。順番が回り、私も返事をして起立、不動の姿勢をとったが、その直後に「笑い声」が上がった。「コウタロウ」という名前が古めかしく、時代遅れだったからであろう。私は恥ずかしくて顔をあげられなかった。しかし、呼名は次々と進められる中、また「笑い声」が上がった。その名は「・・・デンジロウ」、さらにまた、しばらくして「・・・トラノスケ」、湧き上がる「笑い声」を聞きながら、私は心中で「自分だけではなかった」と安堵した。入学して半月後、私は陸上競技部に入部した。一年の新入部員は男子三人だけ、顔合わせをして驚いた。なんと、あの時のデンジロウ君、トラノスケ君、そしてコウタロウの私が「勢揃い」していたのである。(2015.4.19)